リスキリングとは?
「生成AIが話題になっているけど、このまま今の仕事を続けていて大丈夫かな?」、「若い世代のやり方についていけるかな?」と不安に思ったことはありませんか?そんな悩みを解決する鍵となるのが「リスキリング」です。今回は、特に若手社会人の皆さんに役立つリスキリング情報をお届けします。
リスキリングとは、既存スキルの向上であったり、新しいスキルを身につけたりすることです。たとえば、経理担当者がデータ分析スキルを習得したり、営業職の方がAIツールの活用方法を学んだりするケースが当てはまります。
リスキリングが盛り上がっている背景
最近、リスキリングという言葉をよく耳にするようになった背景は主に3つあります。
1. AI革命の加速
ChatGPTなどの生成AIの登場で、多くの業務が自動化される可能性が出てきました。ある調査では2030年までに約半数の仕事がAIの影響を受けるとされています。
2. 働き方の多様化
リモートワークの普及により、デジタルスキルの重要性が急上昇しています。オンライン会議の進行やデジタルツールの活用能力が、どの職種でも必須スキルになってきています。
3. 終身雇用の終焉
親の世代で当たり前だった「一つの会社で定年まで」というキャリアパスが、もはや一般的ではなくなってきています。
これらの背景から、日本政府としても以下のようにリスキリングを重要な政策として推進しています。
1. 経済成長と構造的な賃上げの実現
政府は「新しい資本主義」の重要な柱としてリスキリングを位置づけ、経済成長と構造的な賃上げの実現を目指しています。
2. 労働市場の変化への対応
技術革新による産業構造の変化に対応し、労働者が新しいスキルを習得することで、労働市場の柔軟性を高め、国際競争力の強化を図ろうとしています。
3. デジタル人材不足の解消
日本のデジタル競争力が他国に比べて遅れていることを認識し、デジタル人材の育成を通じて、この格差を埋めようとしています。
4. 人口減少問題への対策
労働力人口の減少に対応するため、既存の労働者のスキルアップを通じて生産性向上を図ろうとしています。
5. 地域間・企業間格差の是正
都市と地方、大企業と中小企業のデジタル格差を解消し、全国的な経済発展を目指しています。
政府は、これらの課題に対応するため、5年で1兆円という大規模な投資を行い、リスキリングを通じて「人への投資」を強化し、日本経済全体の底上げを図ろうとしています。
リスキリングのメリット
リスキリングに取り組むことで、次のようなメリットが得られます。
年収アップのチャンス
IT系の資格取得により、平均で年収が15-20%上昇したというデータもあります。
キャリアの選択肢が広がる
営業職の方が、データ分析スキルを身につけることで、マーケティング部門への異動や転職が可能になるなど、新しいキャリアパスが開けます。
市場価値の向上
今後のAI時代でも通用する、普遍的なスキルを身につけることで、自分の市場価値を高められます。
今あるスキルをもっと深く、強化していく方法もあれば、どの業界でも活用できるスキルを増やしていく方法もあります。どのような方法であっても、新しい学びは、あなたの視野や選択肢を拡げてくれます。
リスキリング学習の時間創出戦略
リスキリングにおける一番の課題は「忙しくて時間がない」という点です。日々の仕事で精いっぱい、掃除や洗濯もままならないのに、勉強している時間なんてない!、というのはわたしも同感です。
これに対する最良の答えは、「時間を取りたくなるほど興味のある分野に手を出すこと」です。
年収を上げることや転職で有利になるように、という目的だけでは、なかなか自分の時間を割くことができません。「現状でもまぁいいか…」という気持ちが出てきてしまうからです。つい、夜ご飯食べたあとは何時間もSNSを見てしまう、という行動を変える動機には弱すぎるのです。
でも、ついYouTubeを見てしまう人がいるならば、その動画の中でリスキリング対象として興味のある分野を探して見てみる、と『少しだけズラしてみる方法』はいかがでしょうか?情報セキュリティについて学習して資格を取りたいのであれば、それらを解説している動画を探して眺めてみる、そうすると、机に向かって勉強するより楽に取り組めるのではないでしょうか?
学習においてエンジンがかからない理由のひとつは、「よくわからない」ことです。
- 言っていることがよくわからなくて気持ちが乗らない
- どこがわからないのかもよくわからなくて、イライラする
- 先が見えなさ過ぎてやる気がでない
そこで、自分に合った勉強方法、たとえば動画で理解を深めていく、という入口から「わからない」を減らしていって、小さなステップを駆け上がっていきます。いきなり高い壁をクリアするのは難しいですが、ブロックひとつを乗り越えるのであれば、できるような気がしませんか?
そのほか、よく言われている"すき間時間"を活用して、学習を深めていきましょう。
- 通勤時間の活用:電車での移動時間を使って動画や本で学習する
- ランチタイムの活用:昼休みに15分でも学習時間を確保する
- 休日の時間管理:SNSの時間を少し減らして学習に充てる
業界を超えて役立つおすすめの資格
リスキリングの成果として、わかりやすいゴールとなるのが資格取得です。わたしがおすすめする資格は、「どこでも役立つスキル」です。つまり、業界や職種、会社の壁を越えて生かせる個人が持っている強みを表す「ポータブルスキル」です。
たとえば、以下のようなスキルがあります。
キャリアコンサルタント資格
こんな人におすすめ
(全員)…では話にならないので、- 役職に就く方
- 社内でのキャリア支援に携わりたい方
- 人事部門での活躍を目指す方
- 将来、独立してキャリアカウンセラーになりたい方
資格試験では、理論だけでなく実践的なカウンセリングスキルの面接があります。傾聴の姿勢を基本として、相談相手にそったキャリアコンサルティングを実施します。
人事やカウンセラー業務に携わらない方でも、社内で1on1が設定されていたり、部下の相談にのったり、ということが少なくありません。その際に、このような資格が活きてきます。
わたしはキャリアコンサルタント資格を取得しましたが、基本となる「傾聴」を、実際にできている人がとても少ないと実感しています。それはキャリアコンサルタントの資格を持っている方であっても、です。
上司との面談で「最近どうか?」と聞かれて、わたしの話半分に言葉をさえぎられては、「そのくらいの年代ならよくあることだよ」とか、「困ったら周りに相談するんだよ」なんてアドバイスをされて、「結局話聞いてくれないじゃん…」とガッカリしたことが何度もあります。それくらい「傾聴」は難しいものです。
だからこそ、この資格を強く推したいと思いますし、そのようにきちんと話をきける人は、どのような環境においても活躍できると断言できます。
情報セキュリティマネジメント
こんな人におすすめ
(全員)…では話にならないので、- 個人情報を扱う部門で働く方
- IT部門で活躍したい方
- セキュリティ分野でキャリアを築きたい方
最近のランサムウェア被害の増加などで、需要が急増している分野です。社内の情報を適切に保護するためにも、セキュリティ意識が高い人であることを示せるため、必須と捉える企業も出てくるのではないかと考えています。
基本的なIT知識があれば、3-6ヶ月程度の学習で取得可能です。
Generative AI Test
こんな人におすすめ
- 生成AIを業務に活用したい方
- 新しい技術にキャッチアップしたい方
- 業務効率化を推進したい方
IT業界やシステム化を推進している企業であれば、このような資格を持つことでまわりと差別化できます。成長が早すぎて、資格そのもの意味が低下していく可能性はありますが、転職時に「最新技術も積極的に学ぶ姿勢がある」ことを明示的にアピールできます。
ビジネス統計スペシャリスト
こんな人におすすめ
- データに基づく意思決定をしたい方
- マーケティングでの分析力を高めたい方
- 説得力のあるレポートを作成したい方
若い世代でありがちな「Excel使えます」について、この資格の観点を踏まえて分析ができると、まわりと劇的に差別化できます。
企業側が求める「Excel使えます」は、セルに文字が入力できるとか、SUM関数で足し算ができるということではありません。膨大なデータをどう調理するか、という話になります。調理できる方法を知っている、なぜその調理方法が良いか説明できる、そのような能力があれば、どこでも重宝されます。頭ではわかっていても、それをExcelで実現する方法がわからない、という方もいますので、この資格をとおして二歩三歩先に進んでいきましょう。
リスキリングにおすすめの学習リソース
- オンライン学習プラットフォーム:Udemy、Schoo
- 資格試験対策:TACや早稲田アカデミーなどの通信講座
- 書籍:入門書から実践書まで、レベルに応じて選択
「キャリアコンサルタント資格」取得に向けて
わたしがおすすめする「キャリアコンサルタント資格」は、国家資格です。
誰でも受験することができますが、実務経験がない方は、受験資格として「厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了」する必要があります。そのうえで、技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験又は実技試験に合格することが要件です。
厚生労働大臣が認定する講習は、いくつかの企業が実施しています。資格取得に興味がある方は、複数の企業の情報を比較して決めるのがおすすめです。
わたしは家から通いやすい点で、「特定非営利活動法人キャリアカウンセリング協会」を選択しました。ここで一緒に勉強した方々とは今でもつながって情報交換しています。幅広い年齢の方と交流できたため、資格取得以外のことでもたくさん勉強になりました。
そのほかには、すべてオンラインで完結できる「一般社団法人地域連携プラットフォーム」もあります。わたしはコロナ禍前だったため、当然のように対面相談しか勉強しませんでしたが、最近はキャリア相談がオンラインになっているところが多くあります。そのため、オンライン相談にまだ慣れておらず、正直苦手としています。。学習の段階からオンラインであることは、今後の情勢を考慮すると強い武器になると思います。
また、教育訓練であるため給付金支給を申請できますが、企業によりベースとなる講習費用が異なります。わたしが通ったところは、他社と比較すると高めでした(あとで知りました…)。費用も決して安いものではないため、ここも十分に比較して決定することをおすすめします。
リスキリングは、キャリアを自分でコントロールするための当たり前の選択肢になってきています。「いつか始めよう」ではなく、今日から小さな一歩を踏み出してみませんか?きっと1年後の自分は、今の自分に感謝するはずです。
自分の市場価値を高め、将来の可能性を広げるリスキリング。あなたもぜひチャレンジしてみてください!