IT業界で頻繁に目にする「SES(System Engineering Service)」。特に未経験からIT業界を目指す方にとって、重要な選択肢の一つです。しかし、インターネットで検索すると「客先常駐 やめとけ」「SES やめとけ」という否定的な意見が多く見られます。この記事では、SESの仕組みと課題、特に多重下請け構造について詳しく解説します。
SESとは何か?
SESとは、顧客企業に常駐して技術サポートを行うサービス形態です。
一般的な雇用形態との違い
- 正社員:直接雇用で、社内の様々なプロジェクトに従事
- 派遣:人材派遣会社と派遣契約を結び、派遣先で勤務
- SES:直接雇用だが、所属会社が顧客企業等と請負契約を結び、顧客企業に常駐して業務を行う
多重下請け構造の仕組み
基本的な構造
実際の案件では、以下のような多重下請け構造が一般的です。
なぜこのような構造になるのか
- 人材不足:元請けや一次請けだけでは必要な人材を確保できない
- リスク分散:プロジェクトに必要な人数の増減に対応しやすい
- 商習慣:大手企業との取引には元請けの信用力が必要
多重下請け構造がもたらす問題と対策
問題:スキルと単価のミスマッチ
発注元:「70万円も払っているのに、期待するスキルレベルに達していない」
エンジニア:「要求されるスキルが高すぎる。給与と見合っていない」
このようなミスマッチが発生する主な理由
・ 中間マージンによる実質単価の低下
・ スキル評価の不透明性
・ 適切な教育機会の不足
スキルと単価のミスマッチの課題は、常駐先決定のタイミングでは無視されて、現場で発生することです。発注元はもちろん、現場の方は細かい商流まで把握していないため、「ただの使えないやつ」と評価されてしまうことが少なくありません。
ひとつの会社から複数人が同じところに参画していれば、「先輩が後輩を指導する」ことで許容できますが、単独で常駐する場合はその本人のみで評価されてしまいます。
対策:より良い体制づくり
多重下請け構造そのものを変えていくのは非常に困難です。よっていくつかの”方法”によって、許容度を上げていく方法をわたしは提案します。
チームとしての機能を重視:
- 複数人で補完し合える体制
- 経験者と未経験者の適切な配置
適切なスキル評価と育成:
- 体制が必要とするスキルレベルを具体的に言語化して募集
- 応募者の現状のスキルレベルを正確に把握
- 長期プロジェクトでは段階的な育成計画を策定
異なる会社が絡むプロジェクトで育成を行うのは、理想に過ぎないと批判されるかもしれません。しかし、わたしはせっかくきてくれたのだからと分け隔てなく教育しながら進めるようにしました。人間としての素地が問題なければ、スキルは本人のやる気でカバーできます。全くわからない人がいるからこそ、わたしも勉強になることが多くありました。経験者と未経験者が一緒になって、経験とスキルを積み重ねて良いチームとなり、成果をあげてきたのがわたしの誇りです。
SESの多重下請け構造にはこのほかにも様々な課題がありますが、未経験者のキャリアスタートとして活用することは可能です。
重要なのは、この構造を理解した上で、あなたのキャリアプランに合わせて活用することです。それこそ「現場ガチャ」と言われる外れ案件もありますが、商流があるからこそ比較的抜けやすいのも事実です。完全な理想形ではなくても、チームで助け合い、互いに成長できる環境があれば、SESは有効なキャリアステップとなり得ます。
インターネット上の声だけに惑わされず、理解して、自分の頭で考えて、新しい道にチャレンジしてみませんか?
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